三大ソナタと後期三大ソナタ

hypersigma2004-06-14


ベートーヴェンのピアノの三大ソナタといえば,いわゆる「悲愴」「月光」「熱情」の三つが必ず挙げられるようです.これらはちょうど「初期」「中期(前半)」「中期(後半)」のそれぞれを代表する作品で,しかもそれぞれの曲に極めて斬新な要素と,強烈な個性が封じ込められているからでしょう.

これに対して,後期三大ソナタとよばれるソナタ群があります.三大ソナタと言われてはいますが,なぜか32曲のソナタ全部から3曲代表作を選ぶときには,これらのソナタが1曲も選ばれないんですよね.普通に考えれば,「前期」「中期」「後期」から1曲ずつ選びそうなものなのですが・・と,後期ソナタを聴いたことがない頃には,勝手にそう思っていました.

しかし,実際に後期三大といわれる 30, 31, 32 の3つのソナタを聴いてみると,なるほど,これはここから1曲代表を選べというのは無理だと感じました.よく見る解説にもありますが,これらの3曲はもともとベートーヴェンが3曲のソナタを作ることを予定してから作り始めたもののようです.そのせいか,30,31,32のソナタがあたかも「3曲のソナタで構成される大ソナタ(?)」,つまり30,31,32の3曲まとめて1つの作品であるかのような印象を受けます.もしそうだとすれば,ここから1曲選ぶと言うことは,たとえば「熱情」の何楽章目が一番よいか?というような,ありえな選択を強いているようなものですよね.それは無理かなあということで,私なりに勝手に納得しています.