気分転換にバロック

hypersigma2004-05-17


何か曲を選んでピアノの練習をしていると,最初のうちは急速に上達していくのが目に見えて分かります.しかし,繰り返し練習してうまくなっていくにつれて,この上達の度合いが目に見えては分からないようになってきます.これは,ピアノに限らずどんなものでもそうだとは思いますが,ピアノの場合は1つ曲を習得しようとするたびに毎回同じような目にあうので,特にこの「上達の頭打ち」を顕著に感じる気がします.

こういう行き詰まり感を打破する方法として,何か全く系統の違う曲に手を出してみるという方法があります.いわゆる,気分転換ですね.今回,気分転換で手を出したのはJ.S.バッハ平均律クラヴィーア曲集の,俗にいうところの「第一巻」に収められているフーガ第二番ハ短調です.この曲は,悲愴ソナタと比べると「同じ楽器で演奏している曲!?」かと疑うほどに,全くもって別の系統の曲です.このくらい系統が変わってしまうと,気分転換を通り越して,新しい苦悩に出会ってしまう可能性もあるにはありますが・・

それにしても,久しぶりに両手で違う旋律を奏でる曲を演奏すると,しばらく刺激されてなかった脳の休眠部位が活性化する気がします.私の場合こういう曲にとりかかるときは,まず各パートがどういう旋律になっているのかを最初に個別に弾いてみて,その旋律を耳で覚えるところから始めます.各パートが個別に歌えるようになったら,それから各パートがどういうふうに重ね合わさっているかを覚えます.これは,一声だけを弾いて他のパートは弾かずに口で歌います.そこまでやってから,最後に重ね合わせをします.このときも,最初は2パートだけ重ねて,それができたら3パート,というふうに増やします.

とまあ,こういうことをやっていると,なんだかうまくバッハの策(?)に乗せられてしまっている気はするのですが・・.譜面を見ながら弾いていると,聴いているだけでは分からない,バッハのすごさがちょっとずつ分かってくる気がします.音楽の理論,旋律の流れ,運指,表情のつけかたなど,いろいろなことを考えながらでないとうまく曲が演奏できないようになっている(気がする)んですよね.平均律,CD 聴いてみても良さがよく分からないときは,一度弾いてみることをオススメしたいです.といっても,私でも弾けるような曲はごく一部ですけど・・