ポロネーズ 第5番 嬰へ短調 作品 44

ショパンの絶頂期にあたる1840年から41年に作曲された作品です.間違いなく傑作だと思います.しかし,その割にはいまいち(一般的には)知名度の低いですね.もちろん,ショパンの曲を演奏する人なら,まず絶対に知ってると曲だとは思いますが.演奏があまりに困難であることや,演奏時間が10分程度と長いことなどが,知名度の低い原因なのでしょうか.ある意味,マニアックな曲だとも言えます.

主題は短調の旋律なのに,暗いというよりは「力強く前進」している感じがします.主題がちょっとずつ違った形で出て行く中に,不安をあおるような旋律や,微妙にやわらかくて少し安らぐような旋律など,いろいろな旋律が出てきます.そういった展開の後に,いきなりマズルカが入ってきます.マズルカポロネーズの主題とは対照的に柔らかくて安心する旋律ですが,それも長くは続かずにまた不安な序奏の再現から主題の旋律へと戻っていきます.

この曲は,どんどんと展開していく様子が個人的にかなり気に入っています.なんというか,ドラマ性がある曲が好きなんですよね.厳しい冬の山へ不安ながらも力強く登っていく冒険者のドラマとかを勝手に想像してしまいます.前進しつつも厳しいブリザードに阻まれて挫折しそうになったり,ちょっと岩陰で休んでほっとしたり,崖際の危険な道を決死の覚悟で進んだりする冒険者.悪戦苦闘していると,ほんの一瞬だけ天気がよくなり,太陽の光に照らされた穏やかな銀世界を目にし,ちょっとだけ安堵を得る時間が来ます.でも,またすぐに天気が悪くなりブリザード.しかし,力を取り戻した冒険者は,めげずに吹雪のかなたへ突き進み,高原のかなたへ消えていく・・というような勝手なストーリーを想像するわけです(何も根拠はないので念のため).

あまりに難しすぎて,自分で弾くのは多分無理な気はしています.でも,弾いてみたい曲のひとつではあります・・.