Roland CM64

DTM でおなじみの Roland という会社が,10年くらい前まで売っていた CM64 という電子楽器(音源)がありました.この電子楽器は,当時としては珍しく PCM 音源を積んでいました.PCM 音源とは,いわゆる FM 音源のような電子的に「作った」音ではなく,楽器で演奏した音ベースに使っている音源のことです.電子的に作られた音に比べると,より本物の楽器の音に近かったため,例えばピアノやバイオリン,ギターなどの楽器を使った曲を演奏させるのに向いていました.

わたしは当時, FM 音源系のピアノの音がどうにも軽薄で,不満をもっていました.買うときにいろいろと楽器の音を聴き比べた結果,CM64 のピアノの音はかなり許せるレベルにあり,これなら買ってもいいかなと思いました.そして,当時草の根BBSニフティなどで流通していたピアノ曲を拾ってきては聴いてみたのですが・・その多くは,音符をそのままシーケンサで入力しただけで,演奏の表情が全然ついていませんでした.なんというか,PSG で電子音を単調に鳴らし続けているレベルと変わらなかったんですよね.これがあまりに不満で,仕方なく自分で何か曲を打ち込んでみようという気になったしまったわけです.

本格的なMIDI対応音源を前に,果たして何から打ち込もうか・・と思いつつ,楽譜をぱらぱらとめくっていて目にとまったのが,ショパンの「革命のエチュード」でした.曲そのものは有名だし,譜面の長さも見開きで4P程度と短くて,打ち込み練習用としてはよさそうでした.曲が決まったら,次はお手本探しです.いろいろ迷って選んだのは,ポリーニ先生のショパンエチュード全集でした.この CD はなんというか,先生の超合金ウルトラ演奏(意味不明)に圧倒されます.

それから,たまたま当時 MML ベースのシーケンサソフトを書いている知り合いがいたので,そのソフトを使って曲を打ち込みました.この方には,ピアノ演奏に向くように,相対的なテンポ,ヴェロシティの指定,各パートの定期的な同期などができるように改良してもらったりと,ずいぶんわがままを聞いてもった覚えがあります.おかげで,かなり四苦八苦したものの,半月ほどかかって「ちゃんと表情のついた」革命のエチュードが完成しました.完成後に BBS で披露したところ,ピアノ曲が好きな方々から「表情がついていていいね」と,少なからず賞賛して頂けたのは嬉しかったですね.