エリーゼのために WoO.59

ベートーベンのピアノ曲の中では一番有名な曲でしょう.この曲を全く聴いたことがないという人は,そうそういないのではないかと思います.一度聞いたら忘れない印象的で分かりやすいメロディーをもっていながら,ピアノを弾き始めたかなりの初心者でも弾けなくもない難易度というあたりが素晴らしいですね.最初に弾きたい曲ランキングでも,この曲は圧倒的に一位のようです.

上に挙げたページの中に書かれているように,この曲はロンド形式で書かれています.構成としてはメインの旋律 A とサブ旋律 B, C の組み合わせで ABACA という形をしています.A の部分はとても有名なあの旋律を含む部分で,B は小気味よく陽気にスキップしているような旋律,C は B と対照的に重々しく激しい旋律です.各部ごとの旋律の雰囲気が違うことが曲にメリハリを付けていて,小作品ながら飽きさせない展開になっています.必要な演奏技術も各部で異なっており,例えば A の部分は両手を交互に使いながらアルペジオのようにゆるやかに演奏していくのに対し,B では軽快なリズムの旋律に和音の伴奏,C では重い和音の旋律に単音連打の伴奏という形です.この変化に富んだ構成おかげで,一曲練習するだけでいろいろな技術が練習できます.もちろん,練習当初こんなことは考えず,ただ「弾きたい」という気合だけでひたすら鍵盤に向かっていましたけど.

弾き始めにいきなりつまずいたのが,やはり両手で演奏することでした.左手と右手がバラバラに動いてくれず,恐ろしく苦労した覚えがあります.それでも,この曲は A の旋律部分のところは左手と右手を交互に使う譜面になっており,しかも両手とも単音(和音でない)の旋律なので,実は両手をバラバラに使う訓練の導入としてはかなり良かったように思います.

半月くらいかかってようやく A の部分を制覇し,B の撃破に取り掛かったわけですが… B では右手で旋律を奏でながら左手で伴奏を入れていくようになっており,両手をばらばらに動かす難しさは A 部の比ではありません.特に B 部のクライマックス付近はかなり難易度が高く,何度も投げそうになったくらいです.ひとつき近くかかってやっとのことで B 部を仕上げ,最後の C 部に入りました.和音をつなげていく旋律が全く未経験なのと,単音を連打するのに指を替えていくことへの不慣れによって,ここでも予想以上の苦労を強いられることに.とどめは,クライマックスのアルペジオから下降の半音階…って本当にバイエル終了レベルで弾けるのか!?と思うような難易度です.

毎日2時間くらいは練習して,最終的に2ヶ月くらいで何とか弾けるようにはなりました.ただ,最初に練習した曲なのであくまで「音符通りに押せる」ことを重視し,指使いや表情付けのことを無視してました.そのせいで,未だに「思い通りに弾ける」曲にはなってないわけですが….それでも,この曲を一通り弾けたことで少しは自信になりました.