ブーニンとスケルツォ2番

ブーニンといえば,1985年のショパンコンクールで優勝したあのブーニンなわけですが,彼が優勝した頃のわたしはショパンコンクールの存在すら知りませんでした.そんなわけで,そのときはまったく偶然に NHK の放送でブーニンがピアノを演奏しているシーンを目にしたわけです.もちろん,ブーニンが誰なのかも知らず「有名なピアニスト?」くらいに思っていました.放送は途中から見たので,どういう趣旨の放送だったかは分かりません(少なくとも,曲目からしショパンコンクールの録画ではなさそうですが).とにかく,凄そうな曲を弾いているなーと思って,何気なくラジカセをつかって録音しはじめました.

しばらくして演奏が終わり,どうやら次の曲が最後の演奏(少なくとも放送される分では)のようでした.画面に表示された曲名は「ショパンスケルツォ2番」.当時,ショパンの曲といえば「幻想即興曲」「小犬のワルツ」くらいしか知らない無知なわたしとって,スケルツォという単語は初耳でした.とはいえ,ショパンの曲だということなので興味津々です.どんな曲かと思っていると…

もう最初から最後まで,曲と演奏の両方に圧倒されっぱなしでした.幻想即興曲こそ最強とか思っていたのに,それを上回る凄い曲があるとは…とショックでもありました.こんな曲がごろごろあるのなら,もっと早くから放送を見て他の曲も聞いておけばよかったとかなり悔んだ覚えがあります.でも,何気なくカセットに録音しておいてよかったと思いました.その後,何度もカセットで演奏を聞いているうちに楽譜が見たくなって,近くの楽譜屋へ買いに行くことになります.これが,後にショパンの楽譜やら CD やらを買い漁る第一歩だったわけですが….

ずっとあとになって,あの演奏はブーニンだったということを知りました.当時の日本ではブーニン旋風が巻き起こっていた(らしい)ので,NHK が結構頻繁にブーニンの演奏を放送でやってたりしていたようです.おそらく,わたしが見たのはその一部だったのでしょう.その後は番組表をこまめにチェックしたりして,ショパンの曲の演奏を集めるようになりました.