脳と運指
少し前に科学的に運指技術を考えるということをやってみたいという話を書きました.しかし,さすがに世の中は広いもので,すでに脳と指の動きとの関係を研究されている方がいるんですね.これについて書かれている本は,正しいピアノ奏法という,一見よくありそうなタイトルの本です.ムジカノーヴァに連載されていたインタビュー形式の記事をまとめたものだそうで,話し言葉でかかれているためかなり読みやすい内容になっています(多少,図面の参照がしにくいですが・・).
この本が画期的だと思うのは,指を思うように動かすにはどの筋肉をどう使うべきなのか,またその筋肉を鍛えコントロールするにはどのようなトレーニングをすべきか,ということが科学的な根拠に基づいて書かれているところです.さらに,これらのトレーニングが鍵盤を離れたところでできるということも,かなり新しいのではないかと思います(少なくとも私は同様の本を他には知りません).
具体的には,ピアノを「楽に・意のままに」弾けるようにするためには,
- それぞれの筋肉を独立させて動かせる制動力を得ること.
- 腕の重みに耐える関節と筋肉を作ること.
- 筋肉を反応させる高い反射力を得ること.
- 動作に使うべき最小限の筋肉の組み合わせを(身をもって)覚えること.
が必要だと書かれています.そして実際に,これらを調べる方法や鍛える方法が,科学的な根拠を交えて詳細に書かれています.実際に自分自身でテストしてみると,恐ろしいほどに的を射ていて愕然としてしまいました.どうにも特定の運指がうまくいかないという方は.これを一読すると目からうろこが落ちるかもしれません.
ただ,惜しむらくはこの本がインタビュー形式で書かれていることです.問題点>テスト方法>解決法という対比をまとめ,より体系的に書かれていると非常にわかりやすくなるのではないでしょうか.また,こちらにも書かれておりますが,絵と文章では直感的にわかりにくいところがあるため,是非とも映像化していただきたいと思います.
ともあれ,もう少しこの本の内容については,わたし自身を実験台として研究してみたいと思います.