幻想曲 ヘ短調 Op.49

1841年に作曲されたこの曲はショパンの絶頂期の作品であり,わたしの説明するまでもなく最高傑作のひとつとして数えられています.バラードとソナタ形式を足して2で割ったような曲想になっていますが,やはりどちらとも異なっています.バラードが基本的に3拍子であるのに対し,この曲は4拍子です.またソナタ形式のような展開を見せながらも,あくまでそういう感じがするという程度のものです.

曲は「雪の降る町を」に使われたというモチーフを含む長い前奏から始まります.しかし,いきなり駆け挙げるような速いパッセージに変わり,そこからは緩かな短調>朗らかな長調>和音の連続>階段を駆け上がるような旋律>行進曲のような旋律>最初の主題の展開と繰り返し・・以下略というように,多彩な楽想が次々と現れては消えていきます.この惜しげもなく多様な旋律を投入していく様が,なんとも贅沢です.途中,スケルツォの中間部で出てくるような穏やかながらも何か感情を含むような旋律が挿入され,また冒頭の激しいパッセージへと戻ります.そして,その後も展開を繰り返しながら,フィナーレへと自然に進んでいきます.

とまあ,あまり言葉で説明してもよくわからないですし,的外れであったりもするかもしれません.百聞は一見にしかずというか一聴にしかず(?)というものでしょうか.

この曲は,規模の大きさもさることながら,演奏の難易度的には凄まじいものがあるそうで,おいそれと演奏会の曲目に並ぶような曲ではないそうです.また聴くほうにもエネルギーを要求するというのもあるからでしょうか.最高傑作とされているにもかかわらず,演奏される機会が比較的少なく,また一般的な知名度も低めのようです.